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『枕草子』は10世紀の終わりから11世紀の始めにかけて成立した不思議な作品です。内容は歌枕のような地名、辞書的な項目、ひねりの利いた皮肉な分類、宮廷女房日記的なものと、多彩ですが、いずれも、中宮定子の女房としての価値観と美意識を背景としたユニークな文章の集成となっています。 今回は、『枕草子』の宮廷日記的な側面に焦点をあてながら、『枕草子』が書こうとした歴史と、他の歴史資料によって想定される事実との落差、隔たりを取り上げ、『枕草子』がいかに、歴史的事実に背き、抗い、独自の世界を構築していったのかを見ていきます。 そのことで、『枕草子』が描こうとした世界の本質を明らかにし、当時の読者にもたらした影響も考えます。『源氏物語』の登場の10年ほど前に登場したこの『枕草子』という作品がどのように享受され、どのような波及効果を生み出したか。それが後々までどのように受け止められてきたかも併せて考えていこうと思います。
〇第一回 「あとがき」から読む『枕草子』
『枕草子』は中宮定子に奉られた「草子」(ノートブック)に書かれた「歌枕」(歌を詠むための知識集)から始まったと言われます。 その執筆の経緯を作者自ら語っているのが跋文(あとがき)と呼ばれる一文です。ここには『枕草子』の執筆の契機、草子の下賜、『枕草子』という題号の由来、執筆内容、読者意識、執筆時期、流布の経緯など、重要な情報がたくさん述べられています。 その文章を解読し、歴史的な出来事として整理することで、何が見えてくるのか考えていきます。
〇第二回 「春はあけぼの」―「~は」型章段の行方
『枕草子』の初段「春はあけぼの」を読み、その描き出した世界を紹介しながら、この章段の新しさと魅力を味わいます。 さらに「春はあけぼの」のように、「~は」という章段題のもとに答えが一つしかない理由はなぜか、その意味を考えてみます。 『枕草子』がみなの共通理解に埋没していた段階から、特別な、ひとりだけの叙述に向かう過程を、「花の木ならぬは」「木の花は」の章段と比べながら考察する回です。
〇第三回 「~もの」型章段の逸脱
「~は」章段は、題にあたる事項の範囲内の類聚でしたが、「~もの」の章段は、ジャンル枠の中に入らない、はみ出しものの感覚を扱います。 「春はあけぼの」の最後の「冬は」が「わろし」で終わったように、本来「をかしく」「めでたき」ものを集めるはずだった『枕草子』は、逸脱につぐ逸脱で、思いもかけない「はみだしもの」の感覚を取り上げます。 快の章段よりも不快な章段に偏って集成された「~もの」章段の意味を、「すさまじきもの」「あはれなるもの」から考えます。
〇第四回 積善寺供養段の桜
積善寺供養の段は『枕草子』最長の段で、中関白家の栄華の頂点を表す派手にして豪華な章段です。 宮仕え三か月後の新人であった清少納言がどのように活躍し、主家の信頼を得ていくか。朋輩の嫉妬を乗り越えて、どのように認められていくかを追いながら、法会という場がいかに人々の心を集約する重要な場となっているかを明らかにしていきます。 また、「桜」の造花の意味、「光」の描き方、「雨」の意味など、『枕草子』という作品の特別な描き方にも注目します。
〇第五回 清涼殿の桜と疫病
「清涼殿の丑寅の隅の」の章段は、積善寺供養の段の一か月後の出来事です。 ここでは、日の光が輝き、桜は爛漫と咲き乱れますが、この出来事を永遠の出来事として保存したいという思いが強調されます。これは栄華の記憶が失われてしまった後に、回想された章段だったからでしょう。 「花(桜)を見れば物思いなどない」と繰り返されたひたすらな明るさの印象が、疫病流行のさなか、中関白家の揺らぎの中で記し留められた意味を考えていきます。
〇第六回 「淑景舎東宮に」段の輝き
「清涼殿の丑寅の隅」段の翌年関白道隆は次女原子を皇太子に入内させます。入内した次女と長女中宮定子との対面場面は、「めでたからぬことなし」と捉えられますが、実はこの時道隆は前年暮以来の病に侵され、関白の位も辞表を提出中で、引退覚悟の状況にありました。 追い詰められた一家の最後の輝きはどのように描かれたか、差し迫った危機はどのように表現されているのかを見ていきましょう。
〇第七回 「関白殿黒戸より」に見られる道隆退場
「淑景舎東宮に」段の二か月後、道隆は四十三歳で世を去ります。 そこから、中関白家の崩壊は始まっていくのですが、その大きな変動を『枕草子』はどのように描いていくのか、興味深い展開を見せる「関白殿、黒戸より」の段と、「ねたきもの」の段の裁縫の記事から、『枕草子』に特有な「空白」設定の問題―もっとも重要な話題はスキップして、その前後だけを強調する書き方の問題―を考えていきます。
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≪日本古典への招待≫
~枕草子~-歴史そのままと歴史離れー
【『枕草子』講師からのコメント】
『枕草子』は10世紀の終わりから11世紀の始めにかけて成立した不思議な作品です。
内容は歌枕のような地名、辞書的な項目、ひねりの利いた皮肉な分類、宮廷女房日記的なものと、多彩ですが、いずれも、中宮定子の女房としての価値観と美意識を背景としたユニークな文章の集成となっています。
今回は、『枕草子』の宮廷日記的な側面に焦点をあてながら、『枕草子』が書こうとした歴史と、他の歴史資料によって想定される事実との落差、隔たりを取り上げ、『枕草子』がいかに、歴史的事実に背き、抗い、独自の世界を構築していったのかを見ていきます。
そのことで、『枕草子』が描こうとした世界の本質を明らかにし、当時の読者にもたらした影響も考えます。『源氏物語』の登場の10年ほど前に登場したこの『枕草子』という作品がどのように享受され、どのような波及効果を生み出したか。それが後々までどのように受け止められてきたかも併せて考えていこうと思います。
【講座カリキュラム:前期講座】
〇第一回 「あとがき」から読む『枕草子』
『枕草子』は中宮定子に奉られた「草子」(ノートブック)に書かれた「歌枕」(歌を詠むための知識集)から始まったと言われます。 その執筆の経緯を作者自ら語っているのが跋文(あとがき)と呼ばれる一文です。ここには『枕草子』の執筆の契機、草子の下賜、『枕草子』という題号の由来、執筆内容、読者意識、執筆時期、流布の経緯など、重要な情報がたくさん述べられています。 その文章を解読し、歴史的な出来事として整理することで、何が見えてくるのか考えていきます。
〇第二回 「春はあけぼの」―「~は」型章段の行方
『枕草子』の初段「春はあけぼの」を読み、その描き出した世界を紹介しながら、この章段の新しさと魅力を味わいます。 さらに「春はあけぼの」のように、「~は」という章段題のもとに答えが一つしかない理由はなぜか、その意味を考えてみます。 『枕草子』がみなの共通理解に埋没していた段階から、特別な、ひとりだけの叙述に向かう過程を、「花の木ならぬは」「木の花は」の章段と比べながら考察する回です。
〇第三回 「~もの」型章段の逸脱
「~は」章段は、題にあたる事項の範囲内の類聚でしたが、「~もの」の章段は、ジャンル枠の中に入らない、はみ出しものの感覚を扱います。 「春はあけぼの」の最後の「冬は」が「わろし」で終わったように、本来「をかしく」「めでたき」ものを集めるはずだった『枕草子』は、逸脱につぐ逸脱で、思いもかけない「はみだしもの」の感覚を取り上げます。 快の章段よりも不快な章段に偏って集成された「~もの」章段の意味を、「すさまじきもの」「あはれなるもの」から考えます。
〇第四回 積善寺供養段の桜
積善寺供養の段は『枕草子』最長の段で、中関白家の栄華の頂点を表す派手にして豪華な章段です。 宮仕え三か月後の新人であった清少納言がどのように活躍し、主家の信頼を得ていくか。朋輩の嫉妬を乗り越えて、どのように認められていくかを追いながら、法会という場がいかに人々の心を集約する重要な場となっているかを明らかにしていきます。 また、「桜」の造花の意味、「光」の描き方、「雨」の意味など、『枕草子』という作品の特別な描き方にも注目します。
〇第五回 清涼殿の桜と疫病
「清涼殿の丑寅の隅の」の章段は、積善寺供養の段の一か月後の出来事です。 ここでは、日の光が輝き、桜は爛漫と咲き乱れますが、この出来事を永遠の出来事として保存したいという思いが強調されます。これは栄華の記憶が失われてしまった後に、回想された章段だったからでしょう。 「花(桜)を見れば物思いなどない」と繰り返されたひたすらな明るさの印象が、疫病流行のさなか、中関白家の揺らぎの中で記し留められた意味を考えていきます。
〇第六回 「淑景舎東宮に」段の輝き
「清涼殿の丑寅の隅」段の翌年関白道隆は次女原子を皇太子に入内させます。入内した次女と長女中宮定子との対面場面は、「めでたからぬことなし」と捉えられますが、実はこの時道隆は前年暮以来の病に侵され、関白の位も辞表を提出中で、引退覚悟の状況にありました。 追い詰められた一家の最後の輝きはどのように描かれたか、差し迫った危機はどのように表現されているのかを見ていきましょう。
〇第七回 「関白殿黒戸より」に見られる道隆退場
「淑景舎東宮に」段の二か月後、道隆は四十三歳で世を去ります。 そこから、中関白家の崩壊は始まっていくのですが、その大きな変動を『枕草子』はどのように描いていくのか、興味深い展開を見せる「関白殿、黒戸より」の段と、「ねたきもの」の段の裁縫の記事から、『枕草子』に特有な「空白」設定の問題―もっとも重要な話題はスキップして、その前後だけを強調する書き方の問題―を考えていきます。
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